投稿者「nfsjadmin」のアーカイブ

Vol. 8 『THE LAST GIRL-イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語-』

ヤズィディ教徒の文化、地理的状況、信仰、そして生活について語っている本書は、その情報だけでも一読に値します。けれども、この実話が力強く描き出しているのは、著者ムラドが性奴隷として拘束され、家族や友人を失いながらも、懸命に生き抜こうとする勇気です。

受けた虐待の描写も、それに対する勇気ある言動も、とてもリアルに綴られています。生き延びるための闘いの原動力になったのはヤズィディ教徒としての信仰であり、信じがたいほど非人間的な地獄の中にあっても、それが著者を支え続けました。

ムラドや虐殺の犠牲者たちが受けた仕打ちの非情さ・邪悪さは哀しく衝撃的です。ですが同時に、被害者を助けるために自らも危険を冒した者たちの勇気には、心底励まされます。ムラドは性奴隷という運命から生還しただけでなく、悪に対峙する人々を生涯をかけて助けようとしています。この素晴らしい女性の驚くべきストーリーを、ぜひ読んでほしいと思います。
(キャシー・バートンルイス)

【ナディア・ムラド著//吉井智津訳/2018年/東洋館出版社/416ページ/1,800円+税

 http://www.toyokan.co.jp/book/b378140.html

Vol. 7 『使い捨て外国人~人権なき移民国家、日本~』

“日本にこの人がいてくれて、本当に良かった!” 指宿昭一弁護士は、そんな風に思わせてくれる一人です。本書では触れられませんが、バイト生の頃から組合活動に飛び込み、必要に迫られて弁護士になった(しかも司法試験に17回も挑戦!)根っからの活動家であり、正義のヒーローです。

そんな指宿さんが今年上梓したばかりの本書は、タイトルこそ挑発的ですが、本文は事実を淡々と簡潔に綴る、読みやすい外国人問題入門書です。それでも、技能実習生の「時給300円」「98%は労基法違反を申告できず」「社長から50回以上強姦被害」「暴力と脅しで帰国を強制」「ムスリム差別」など、でたらめで非人間的な企業や団体、それを放置している政府に、憤りで本を持つ手が震えるほどです。

本書の前半は外国人労働者の搾取問題を、著者自身が弁護人として関わった事件を例に解説。ですが、指宿さんが「実習生問題よりさらに劣悪で絶望的」と評するのが、後半で語られる、入管による人権侵害問題です。

母国での迫害を逃れ辿り着いた難民申請者すら不法滞在者として扱い、退去命令に背いたら刑務所のような入管施設に収容。「仮放免」されてもいつ再び収容されるかわからず、収容は無期限・長期に及び、身体や精神を病んだり、絶望して自殺を図ったり、抗議のハンストで亡くなる人までいます。何十人もチャーター機に乗せ母国へ「一斉強制送還」させるなど荒っぽいことも行いつつ、一斉送還はコストがかかるため、長期収容で根負けし自費で帰国するのを促している……外国人に人権を認めないこの入管政策は、日本の中でも特に冷酷に思えます。

真の多文化共生は、人を人として見ることなくして実現できません。日本が国際社会の中で尊敬を取り戻すには、「人権なき移民国家」のままであってよいはずがありません。そのことを再認識させてくれるこの本を、ぜひ多くの方に勧めたいと思います。(山岡万里子)

【指宿昭一著/2020年/朝陽会/136ページ/1,000円+税/https://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=352320

Vol. 6 「The Price of Free」(映画)

インドの混み合った街中を走る男たち。ある建物に押し入り、階段を登り、鍵をこじ開けて部屋の中を捜索する。「いない!」「どこだ!」と飛び交う怒号。さらに階段を駆け上ってたどり着いた屋上に積まれた無数の袋の山。その隙間に、押しつぶされるように子どもたちが隠されていた……。

アクション映画のような幕開けの『The Price of Free』 は、8万人以上の子どもたちを奴隷労働から救い出し、2014年にノーベル平和賞を受賞したカイラシュ・サティヤルティさんの活動を紹介するドキュメンタリー映画です。

映画には、実際の救出シーンに加え、子どもたちに心とからだのケアと勉強の機会を与え、社会復帰につなげるリハビリ施設「バル・アシュラム」の様子も映し出されます。最初は怯えて泣いてばかりの子、また職場で叩かれたり、作業中に怪我をさせられたり、満足に食事を与えられなかった子どもたちが健康と笑顔を取り戻す姿には、ホッとさせられます。

一方で、この活動が常に命がけであることも映画は伝えます。潜入調査から見えてくる人身売買業者たちの暗躍、カイラシュさんや家族への脅迫、賄賂の蔓延など、救出活動を阻む力は圧倒的です。それでもカイラシュさんは「あらゆるアプローチが必要だ」と熱く語り、苦悩の中でも諦めません。

どうしたら、私たちはカイラシュさんたちと連帯することができるでしょう?  一つの方法として、映画の中で子どもたちが作っている品物に目を凝らしてみることを提案します。見終わったら、「映画の中に出てきたような商品を選んでいないか」を自問してみましょう。すると、自ずと私たちの購買行動は変わっていくはずです。カイラシュさんが映画の中で言うように「すべての子どもが自由な子ども時代を享受できるように」、今日からできることがあります。(栗山のぞみ)

【デレック・ドニーン監督/2018年/1時間27分 

YouTubeで無料視聴可(日本語字幕あり)
https://www.youtube.com/watch?v=UsqKz1hd_CY  

予告編(英語のみ)https://www.youtube.com/watch?v=S01crxKPeM0 】

 

Vol. 5 『ルポ・ニッポン絶望工場』

あっという間に読み終えました。日ごろから「現代の奴隷」の話をしながら、足元のここ日本、しかも自分のすぐ身近で起きていたのにまだまだ知らない状況があり、かなりショックです。技能実習生の問題はメディアでもしばしば取り上げられるようになりましたが、留学生の問題はほとんど報じられません。けれども実習生より一部の留学生(「偽装留学生」と本書では呼んでいます)のほうが、より酷い状況に置かれていると著者は言います。

 一方、人手不足解消を期待されEPAで来日したフィリピンやインドネシアの介護士・看護師らが、国家試験に合格できず失意のうちに帰国という矛盾に満ちた状況に、かねてから疑問を抱いていましたが、その理由がわかりました。結局、政治行政それぞれの都合に振り回されていたというオチだったのです。

 目の前のことや自分()の利益を最優先する関係者が好き勝手にやり、誰もが旨い汁を吸うことばかり考えていては、移住労働者政策がうまくいくはずがありません。労働力をうまく利用してやるという上から目線の政策ばかりでは、そのうち頼んだって海外から人は来てくれなくなります。いや、もうそういう状況は始まっています。せっかく夢を抱いて来日しても、騙されたと知って恨みを育む…日々そんな外国人を増やしているのです。日本は本当にそれでいいのでしょうか? 

 タイトルにある「絶望」の二文字は、搾取される外国人労働者の気持ちを指してつけられたのでしょう。けれど読了後、これは私たちの政府、そして納税者である私たち自身の将来に対する「絶望」に他ならない、と強く感じました。この国に絶望を感じているのは、彼らではなく私自身なのです。(山岡万里子)                                                                     【*2016年に執筆】

【出井康博/2016/講談社+α新書/192ページ/840円+税https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000202016 】

Vol. 4『女子高生の裏社会 ~「関係性の貧困」に生きる少女たち~』

人身取引はどこで起こっているのでしょうか。答えは、もちろん世界の各地で……です。ということは、私たちの隣にもあるということ? 一般社団法人Colabo の代表として、10代の少女たちに目を向けた活動を行っている仁藤夢乃さんのこの本を読めば、その問いにうなずく他ありません。

前作の『難民高校生』(英治出版)では、家族や学校と折り合いが悪く、居場所を失った少女たちが街中で難民化する様が描かれています。本書ではその彼女たちが、「JKリフレ」(添い寝やマッサージ等)、「JKお散歩」(客との1対1のデート)等、2014年の米国務省の人身取引に関する年次報告書でも、日本の人身取引の例として指摘された「JK(女子高生)産業」で“真面目に”働く姿が記されています。

著者は、家庭や学校での居場所や関係性をたやすく失ってしまう彼らにとって、JK産業がニセの(実際には少女たちを搾取しているにもかかわらず)セーフティネットになってしまっていると指摘します。そして、彼女たちとつながりながら、安全な居場所を作るべく尽力されています。この実態を知った私たちは何をしたらよいのでしょうか。読み終えても私自身への問いかけは続きます。 (栗山のぞみ)

仁藤夢乃著/2014/光文社新書/264ページ/定価760円+税/https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038144

Vol. 3 「未来を写した子どもたち」(映画)

NY在住の写真家ザナ・ブリスキがインド・コルカタへ旅し、売春街で暮らす子どもたちと知り合いになります。彼女は子どもたちにカメラを渡して撮影方法を教えます。写真を撮ることで、子どもたちが自分たちの人生を向上させるきっかけになればという思いからです。

このドキュメンタリーは、売春街で育つ子どもたちの視点と彼らの置かれた生活、そしてその多くがまた売春婦となっていくその運命を追っていきます。制作に当たっては、NGO団体“Kids With Cameras”(現 ” Kids With Destiny”)が協力しています。

人身取引問題そのものをダイレクトに扱ってはいませんが、人身取引被害者やその周囲で間接的に影響を受けている人たちの置かれた状況を知らしめ、わたしたちに新たな問題提起を投げかける作品です。(ソニー・S)

【監督:ザナ・ブリスキ、ロス・カウフマン/公開:2004年(米)2008年(日)/1時間25分/「アジアンドキュメンタリーズ」サイトから495円で7日間視聴可(日本語字幕つき)https://asiandocs.co.jp/con/71?from_category_id=5
予告編
https://www.youtube.com/watch?time_continue=22&v=UM_BVLB7mZI&feature=emb_logo

Vol. 2 『世界中の子どもの権利をまもる30の方法~だれひとり置き去りにしない!~』

「子どもの権利条約」が国連で採択されて30年、日本政府が批准して25年という節目の年の2019年10月に刊行されました。

子どもの権利と暮らしを守るために各分野で活動を続けてきた執筆者たちのそれぞれの取り組みごとに、具体的な例をあげながら、子どもたち自身が問題を知り解決に近づくための30のアプローチを紹介。

最初に紹介される記事は人身売買の例で、カンボジアの少女の話から日本のJKビジネスにまで言及しています。また「早すぎる結婚」や「児童労働」など子どもたちが直面する問題をさまざまな角度から取り上げながら国際理解・権利学習ができる貴重な一冊です。

私は今回、イラストレーターとしてこの本の出版プロジェクトに加わり、どのイラストも本文中の問題を次世代に持ち越さないように願い、また世界中の子どもたちのことを思いながら描きあげました。ぜひ、お手にとって読んでみてください。(ナムーラ ミチヨ)

【認定NPO法人国際子ども権利センター+甲斐田万智子編/2019/合同出版/176ページ/定価1,800円+税/https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b475263.html

(7/30)「NFSJ人身取引反対世界デーキャンペーン2020」が始まりました!

毎年7月30日の「人身取引反対世界デー」に合わせ、NFSJではフェイスブック等のSNS上で啓発キャンペーンを行ってきました。

今年はスタッフがおススメの本や映画を1つずつ1日おきにご紹介していくキャンペーンを7月30日から始めています。一人でも多くの方にこの問題を知っていただくために、ぜひ「いいね」やシェアでこのキャンペーンに参加してください!

フェイスブック https://www.facebook.com/notforsalejapan/

ツイッター (@notforsalejapan)  https://mobile.twitter.com/notforsalejapan

インスタグラム (@notforsalejapan) https://www.instagram.com/notforsalejapan/

いつでも見ていただけるように、その都度アーカイブをこちらのウェブサイトに残していきますので、ぜひご覧ください。http://notforsalejapan.org/books-and-films

(「人身取引・現代の奴隷制をなくすには」⇒「人身取引・現代奴隷問題を知るための本と映画」)

Vol.1 『ファストファッション~クローゼットの中の憂鬱』

お気に入りとは言えないけれど価格の割に品質はまあまあ、でもどれも似たような服が周囲に溢れるようになったのはいつからでしょうか。

本書の前半では、アバクロンビー&フィッチ、Gap、H&Mなど多数のブランドを挙げながら、ファストファッションに牛耳られるようになったアメリカのアパレル業界の構造が紹介されます。

バングラデシュや中国などの縫製工場見学の描写も興味深いのですが、俄然面白くなるのは「搾取は避けたいけれど価格の安さには勝てない」と思っていた著者自身が変化していく後半。彼女がどのようにして「クローゼットの中の憂鬱」を手放すのかは、読んでのお楽しみです。

あとがきで、著者は、ファストファッションのみではなく「早く、安く」と人々を急き立てる社会について書いたと述べています。また、生産者と消費者の隔たりが搾取の遠因になる、とも言っています。私たちが作り手を想像するゆとりをもち、さらには人と人がつながることにこそ、搾取を、現代の奴隷制を解決するカギがあると改めて思わされました。(栗山のぞみ)

エリザベス・L・クライン著/鈴木素子訳/2014/春秋社320p/ 2,200円+税https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333327.html

(8/6)第21回 NFSJカフェ 「外国人入国者の現実 ~入国管理センター訪問を通して~」開催のお知らせ

第21回 NFSJカフェ「外国人入国者の現実~入国管理センター訪問を通して~」

いまや「移民社会」と呼べるほど、移住外国人の数が増えている日本。その多くが労働力として日本経済を支えてくれています。

その中には、祖国での迫害から逃れてやってくる難民の人もいます。ところが難民として申請しても、認められるのはごくわずか(1%未満)です。難民申請者に限らず、さまざまな理由でビザが無く帰国もできない人たちが、留め置かれ収容されているのが入国者収容所です。

今回のNFSJカフェでは、茨城県牛久の入国管理センターや品川の入国管理局収容場に長年通って、被収容者の声に耳を傾け支援をしてきた、アレックス・イーズリーさんのお話を伺います。

移住労働者や難民は人権侵害に遭いやすく、人身取引とも密接な関係があります。今まさにここ日本で起きている問題について、目を向けてみませんか。

《日時》2020年8月6日(木) 19:00~21:00

《場所》オンライン開催(Zoom)

《参加費》 無料(定員30名) *事前申込をお願いします。

《使用言語》 主として英語  (質問などは日本語でもOK)

《講師》アレックス・イーズリーさん
東京バプテスト教会入国者収容所ミニストリー・リーダー。ミュージシャン。

《申込》 下記フォームにてお申込みください。
当日開始2時間前までにZoomのリンクをお送りします。
https://forms.gle/dqZLVejrjPMPBzSw5

NFSJカフェは、人身取引・現代奴隷問題に取り組むノット・フォー・セール・ジャパンが、関心ある参加者と共に、お茶を飲みながら1つのテーマについて話したり映画を観たりする、カジュアルな学びの場です。お気軽にご参加ください。

お問合せ: japan@notforsalecampaign.org

主催: ノット・フォー・セール・ジャパン(NFSJ)

チラシPDFはこちら⇒20200806 NFSJ Cafe No.21 Flyer (J)