Vol. 7 『使い捨て外国人~人権なき移民国家、日本~』

“日本にこの人がいてくれて、本当に良かった!” 指宿昭一弁護士は、そんな風に思わせてくれる一人です。本書では触れられませんが、バイト生の頃から組合活動に飛び込み、必要に迫られて弁護士になった(しかも司法試験に17回も挑戦!)根っからの活動家であり、正義のヒーローです。

そんな指宿さんが今年上梓したばかりの本書は、タイトルこそ挑発的ですが、本文は事実を淡々と簡潔に綴る、読みやすい外国人問題入門書です。それでも、技能実習生の「時給300円」「98%は労基法違反を申告できず」「社長から50回以上強姦被害」「暴力と脅しで帰国を強制」「ムスリム差別」など、でたらめで非人間的な企業や団体、それを放置している政府に、憤りで本を持つ手が震えるほどです。

本書の前半は外国人労働者の搾取問題を、著者自身が弁護人として関わった事件を例に解説。ですが、指宿さんが「実習生問題よりさらに劣悪で絶望的」と評するのが、後半で語られる、入管による人権侵害問題です。

母国での迫害を逃れ辿り着いた難民申請者すら不法滞在者として扱い、退去命令に背いたら刑務所のような入管施設に収容。「仮放免」されてもいつ再び収容されるかわからず、収容は無期限・長期に及び、身体や精神を病んだり、絶望して自殺を図ったり、抗議のハンストで亡くなる人までいます。何十人もチャーター機に乗せ母国へ「一斉強制送還」させるなど荒っぽいことも行いつつ、一斉送還はコストがかかるため、長期収容で根負けし自費で帰国するのを促している……外国人に人権を認めないこの入管政策は、日本の中でも特に冷酷に思えます。

真の多文化共生は、人を人として見ることなくして実現できません。日本が国際社会の中で尊敬を取り戻すには、「人権なき移民国家」のままであってよいはずがありません。そのことを再認識させてくれるこの本を、ぜひ多くの方に勧めたいと思います。(山岡万里子)

【指宿昭一著/2020年/朝陽会/136ページ/1,000円+税/https://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=352320