Vol. 13 『国家と移民~外国人労働者と日本の未来~』

NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の代表理事、鳥井一平さんの最新刊をご紹介します。鳥井さんは、日本に働きに来た“外国人”労働者が人権を侵害され搾取的に働かされている現場に急行し、保護し、権利の回復をサポートする活動を30年以上続けてきました。その活動はNHK番組『プロフェッショナル』をはじめ、様々に報じられています。

鳥井さんは、私たちNFSJも参加している「人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)」の共同代表であり、ご一緒する機会も多くあります。本書にも通じる印象的なエピソードを一つご紹介しましょう。それは、2017年にJNATIPで院内集会を企画していたときのこと。集会のタイトルをどうするかという議論で、鳥井さんが「『偽装される人身売買』でいきましょう。技能実習制度そのものが、発展途上国への技術移転という名目の、国を挙げた偽装なんですよ。日本社会の在り方が『偽装』を受け入れ、許してしまっている」とおっしゃり、一発で決まりました。

本書では、人身取引、過酷な労働搾取になりがちな技能実習制度を、日本社会がどのように「偽装」してきたのか、多くの生々しいケースとともに述べられています。また、日本で外国人労働者がどのように扱われてきたのか、その受け入れ政策の歴史を読むにつけても、いかに場当たり的で、まやかしが続けられてきたかがわかります。

「偽装」である「技能実習制度」が、「遅れている国から来たひとたちに、日本の優れた技能を教えてあげる」という“上から目線”の私たちをつくっていると鳥井さんは指摘します。そうではなく、「人口が減少し産業の担い手が危機的に少なくなっている日本に、働きに来てくれている人たち」として彼らを見ることが必要です。そのためにも一刻も早く「技能実習制度」を止めて、彼らと共に生きるための「移住労働者受け入れ制度」をつくるべきだと本書の中では繰り返し述べられています。

最後に本書から一部引用します。いま、変わるべきは誰なのかは、明確です。
……

「移民」というのは、実は「移民」という言葉で区別されるものではなく、「この社会の一員になろうとしている人たち」と考えた方がいいのです。そして実は今、私たちの社会の方も、「この社会の一員になろうとしている人たち」を求めているのです。

(栗山のぞみ)

【鳥井一平著/2020年/集英社新書/256ページ/860円+税/https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1025-b/