Vol. 8 『THE LAST GIRL-イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語-』

ヤズィディ教徒の文化、地理的状況、信仰、そして生活について語っている本書は、その情報だけでも一読に値します。けれども、この実話が力強く描き出しているのは、著者ムラドが性奴隷として拘束され、家族や友人を失いながらも、懸命に生き抜こうとする勇気です。

受けた虐待の描写も、それに対する勇気ある言動も、とてもリアルに綴られています。生き延びるための闘いの原動力になったのはヤズィディ教徒としての信仰であり、信じがたいほど非人間的な地獄の中にあっても、それが著者を支え続けました。

ムラドや虐殺の犠牲者たちが受けた仕打ちの非情さ・邪悪さは哀しく衝撃的です。ですが同時に、被害者を助けるために自らも危険を冒した者たちの勇気には、心底励まされます。ムラドは性奴隷という運命から生還しただけでなく、悪に対峙する人々を生涯をかけて助けようとしています。この素晴らしい女性の驚くべきストーリーを、ぜひ読んでほしいと思います。
(キャシー・バートンルイス)

【ナディア・ムラド著//吉井智津訳/2018年/東洋館出版社/416ページ/1,800円+税

 http://www.toyokan.co.jp/book/b378140.html