Vol. 11 『ななさんぽ~弱さと回復の“現場”で神がいるのか考えた~』

青い空、白い雲、草原や森や花々。小鳥や蝶が舞い、子犬やリスが駆け回る…。思わず「かわいい!」と引き寄せられる絵柄が持ち味のみなみななみさんは、小さな命への温かな眼差しにあふれるイラストレーターさんです。

ななみさんが、様々な社会活動団体や福祉施設を訪ね、丁寧に取材して毎回3ページの漫画に仕上げた「ななさんぽ」。『百万人の福音』というキリスト教雑誌に連載され、やがて単行本化されたのが本書です。

NFSJも2015年に取材を受け、光栄なことに、この本ではトップバッターで紹介されています。その理由は、「日本でも起きている人身取引の問題に、もっと多くの人に目を向けてほしいから」とのこと。ななみさんはNFSJや、NFSJが参加している「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク(SSRC)」にも無償でイラストを提供するなど、活動を応援してくださっています。

『ななさんぽ』には、ホームレス、アルコール依存者、在日外国人、精神障害者、ひきこもり、虐待被害児童、被災者など、社会の周縁に追いやられがちな人々に手を差し伸べ共に生きようと努力する素晴らしい人々がたくさん登場します。それぞれに、自身が挫折に苦しみ希望を見失いながらも、祈りと励ましの中で立ち上がり、喜びをもって他者に仕え、自らの成長に感謝しつつ生きている人々です。

そんな人々の経験談は暗く重いかと思いきや、ななみさんのイラストのおかげもあって、読んでいて本当に温かい気持ちになれるのです。そしてもう一つ、この本の最大の特徴は、作者のななみさん自身が、自分のこれまでの思いや行動を振りかえって自問し、何かしらの答えを見つけていくプロセスが個々のルポの最後に語られることです。

漫画という親しみやすい形で、たくさんの宝物のような人生がぎゅっと凝縮された本書は、クリスチャンかそうでないかに関わらず、読者の心に多くの新しい知恵と人生の指針をもたらしてくれることでしょう。(山岡万里子)

【みなみななみ著/2019年/いのちのことば社・フォレストブックス/175ページ/1,400円+税/https://www.gospelshop.jp/shopdetail/000000015998/
みなみななみさんウェブサイト http://minaminanami.com/) 】