Vol.1 私たちがNFSJカフェを開く理由

NFSJは7月2日に活動満11年を迎えました。私たちは専門家ではない普通の市民の集まりで、それぞれが人身取引に「No!」を掲げ、「やれるときに、やれることを、やれる人が、やる」というモットーで活動を続けています。「NFSJカフェ」は、そのような背景から生まれた活動です。

私、栗山のぞみも、NFSJに加わったときは人身取引・現代奴隷の問題についてなんの知識も経験もありませんでした。ですから、まずは学びたいと思いました。NFSJカフェも最初の2〜3回は団体内部向けの自主勉強会でしたが、すぐに「私たちが知りたいと思っていることは、他の人も知りたいだろう」と、公開イベントにして皆さんといっしょに学ぶことにしたのです。

勉強会ではなく、カフェと名付けているのには意味があります。人身取引・現代奴隷制はシリアスな問題です。世界にはこの犯罪によって命を失う人も多数います。命は助かっても、搾取された上に身体的・心理的に大きな傷を負い、トラウマを抱えて生きざるを得ない被害者も少なくありません。

それでも、私たちはこの集いを“カフェ”という軽やかな名前で呼びたいのです。それは、気軽に参加してほしいという願いからです。「人身取引ってなんだろう?」「何も知らないけど興味がある」といった動機で来てくださる方も、大歓迎です。

日本ではまだまだ「人身取引・現代奴隷制」自体が知られていません。できるだけ敷居を低くして、関心を持つ人、問題を知る人を増やすことが、解決策のひとつと考えています。また、カフェでお茶を愉しむような私たちの日常生活のすぐ隣で人身取引・現代奴隷の問題が起こっていることにも、気づいていただけたらと思っています。

NFSJカフェは、2022年5月までに合計で28 回開催されました。取り上げてきたテーマには、一見人身取引と関係なさそうなものもあります。ですが、人身取引・現代の奴隷制は、気候変動、戦争、難民・移民、DVやネグレクト、経済格差、人種差別や性差別など社会のさまざまな問題と複雑に絡み合っています。これらの問題を知ることで、人身取引問題をよりよく理解し、解決を目指せるのではないかと私たちは考えています。

今日7月30日は、国連が定めた「人身取引反対世界デー」。この機会に、今後1カ月間さまざまなテーマから、NFSJスタッフが印象に残っている回を振り返ってリポートをお届けします。お読みくださった皆さんが、今後のNFSJカフェに参加してくださることを、心から願っています。

2022年7月30日 栗山のぞみ(NFSJ副代表)