Vol.1 『ファストファッション~クローゼットの中の憂鬱』

お気に入りとは言えないけれど価格の割に品質はまあまあ、でもどれも似たような服が周囲に溢れるようになったのはいつからでしょうか。

本書の前半では、アバクロンビー&フィッチ、Gap、H&Mなど多数のブランドを挙げながら、ファストファッションに牛耳られるようになったアメリカのアパレル業界の構造が紹介されます。

バングラデシュや中国などの縫製工場見学の描写も興味深いのですが、俄然面白くなるのは「搾取は避けたいけれど価格の安さには勝てない」と思っていた著者自身が変化していく後半。彼女がどのようにして「クローゼットの中の憂鬱」を手放すのかは、読んでのお楽しみです。

あとがきで、著者は、ファストファッションのみではなく「早く、安く」と人々を急き立てる社会について書いたと述べています。また、生産者と消費者の隔たりが搾取の遠因になる、とも言っています。私たちが作り手を想像するゆとりをもち、さらには人と人がつながることにこそ、搾取を、現代の奴隷制を解決するカギがあると改めて思わされました。(栗山のぞみ)

エリザベス・L・クライン著/鈴木素子訳/2014/春秋社320p/ 2,200円+税https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333327.html