Vol. 10 『AV出演を強要された彼女たち』

ある日スカウトに声をかけられ、「モデルや女優になれる」「高収入」の誘いについ耳を貸してしまった。その先にAV出演の強要、そしてそこから逃れられない地獄が女性たちを待っていた……。本書は、実際にAV出演を強要された被害女性たちの相談に関わった著者の沢山の経験から、その巧妙な手口と恐ろしい実態を描いたものです。

「話を聴くだけ」と思ったら、とんでもない。言葉巧みに相手のペースで話が進み、時間が経つほど、断り辛い状況に女性たちは追い込まれていきます。「契約しなければ解放されない」と思い、逃れるために契約書にサインしたら最後、今度は契約書を盾に、「断るなら違約金を払え」と脅される。一本だけと説得されて苦汁を飲んで出演したら、想像を絶する恥辱を強要され、その映像を親や知人にばらすと更に脅される。法律も知らない、世間も知らない若い女性たちが、狡猾な手口に取り込まれ、ますます逃げられない状況に追い込まれて行きます。

AV産業の年間市場規模は、4~5千億円。年間約2万タイトルが生産されているといいます。単純計算すると、日々54作品が毎日生産されていることになります。その陰で女性たちへの恐ろしい性暴力と人権侵害が行われ、それが今も合法的な産業として、実に「娯楽」として提供され続けているのです。

そのような被害を受ける女性たちは、自分のことを被害者であることにも気づかず、「自分が悪い」と自分を責め、逃れる術を知りません。自殺に追い込まれる女性たちも多いといいます。そのような被害者たちに寄り添い、痛みと苦しみを共に受け止めながら、解決の道を共に探る救援者たちの働きを通して、被害女性たちが次第に自分を取り戻し、強くされて行く姿に感銘を覚えました。

2018年1月に「AV強要淫行勧誘容疑で制作会社社長ら2名逮捕」のニュースが流れました。これらも救援者たちの血のにじむ努力の賜物でしょう。重い内容の書ではありますが、確かな希望も指し示しているように思いました。(星出卓也)

【宮本節子著/ちくま新書/2016年/240ページ/800円+税/https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480069344/ 】