Vol. 12「ネファリアス~売られる少女たちの叫び~」(映画)

この映画を見ることは、はっきり言って、あまり愉快な体験ではありません。性を売り買いさせるために若い女性の精神をずたずたにし人間性を奪っていく詳細が、生々しく描かれているからです。若い彼女たちが「人」ではなく「モノ」として扱われているさまを目の当たりにして、実際に気分が悪くなる場面もあります。

貧困、無国籍、親を失うこと、あるいは、理解しがたいけれど親が家計のために長女を売春宿に送りこむことといった、人身取引を引き起こす要因を深く掘り下げて見てみると、この問題が非常に複雑であることがわかります。人身取引は東ヨーロッパからアメリカ・ラスベガスまで、幅広い地域に及んでいます。

元ポン引き、ソーシャルワーカー、精神科医、牧師、NPOの代表など、さまざまな立場の人へのインタビューに耳を傾けることで、知らぬ間に忍び寄る悪によって人生が永遠に損なわれてしまう、その傷の深さを知ることができます。幸運にも救出された人であっても、いったい自分に何が起きたのか、どうやったら乗り越えられるのかを理解するために、生涯カウンセリングを受け続けます。悲しいことにそこに到達できずじまいに終わる人もいます。

『ネファリアス』は被害者への共感が込められた、力強く、示唆に富む映画です。そして希望も提示されます。後半では売買春における「北欧モデル(*)」の解説があり、また元売春婦や元ポン引きによる証(あかし)と共に、キリスト教の力強いメッセージが、人々に祈ることを促します。私はこの映画を、クリスチャンでない人にもぜひ観ていただきたいと思っています。恐ろしい現実について知ることができるだけでなく、人生は変えられるという、その可能性についても語っている作品だからです。

「この作品は、現代の奴隷制とは教育や開発の問題ではなく、倫理的な問題なのだということを主張して終わります。女性たちは、性的な存在である以上に、内なる価値を持った存在なのだという認識が失われていることが、問題なのです。」(オンライン上の視聴者評より)

*「北欧モデル」は四つの柱から成っています。買春客は犯罪者として処罰され、一方売春婦は罰せられず、性産業から脱するための支援とサービスを受けられます。そして一般の人々への啓発と教育が行われます。

(キャシー・バートン・ルイス/神門バニー)

【ベンジャミン・ノロ監督/2011年/1時間39分/
制作者Exodus Cryのウェブサイト(予告編あり/英語のみ)
https://exoduscry.com/oursolution/film/
YouTubeにて無料視聴可(日本語字幕あり)
https://www.youtube.com/watch?v=MFaDHgXPbUg 】