私が1年半前に知り合い、親交を深めてきたエンバ・アリソンさんは、有名な歌舞伎町歓楽街に集ったり働いたりしている人々(トー横キッズを含む)のために祈り、その生活に変化をもたらすという使命感を持っている人です。今回は、新宿の闇の部分についてこれまでエンバさんが学んできたことについて、お伝えしたいと思います。
きっかけは、2013年にアメリカのRJC*大会で聴いた一つのメッセージ
そのメッセージとは、自殺防止の仕事に携わっているある日本人の牧師が語った、日本における大きな霊的そして精神衛生上の課題についてです。エンバさんはケニア生まれですが9歳からイギリスに住み、ケンブリッジ大学で社会人類学の修士号を取りました。精神衛生上の困難を抱える他者と共に歩むために、イングランドで1年間、カウンセリングのコースも修めました。13年間ロンドンとボストンの企業で働くかたわら、教会でアジアからの留学生を支援する活動にも携わってきました。
*RJC=Reaching Japanese for Christ (日本人のためのクリスチャン・アウトリーチ)
2011年、エンバさんは日本で働くという召命感を得て、2015年にジャパン・クリスチャン・リンクという名前の宣教団体に参加します。日本文化の直接的な理解を深めるためにJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)で英語教師として来日し、青森や東京の公立学校で7年間英語を教えました。また教師の仕事のほかに、精神衛生に関する奉仕活動、友情を通した宣教、ゴスペル・クワイア、ホームレスの人々への奉仕活動などに携わってきました。
なぜ歌舞伎町へ?
2023年2月、イスラエルへの訪問から日本に戻ってきたエンバさんは、神の導きによって、2人の友人と共に歌舞伎町の路上で「プレヤーウォーク」(祈りながら歩くこと)を行うことにしました。3人とも訪れたことのない地域でしたが、そこへ行って祈ろうという強い確信があったそうです。この小さな一歩からたくさんの奇跡的な出会いに導かれ、この国で最も闇の深い街の中で、神さまの愛と奥深い働きに触れることができました。エンバさんの現在の主な活動は、キリスト教系の反人身取引NPOをはじめ他団体と協働しつつ、歌舞伎町で奉仕することです。同僚たちと共に定期的にこの地区に出向き、プレヤーウォークを行っています。
闇との闘い
エンバさんはこの地区に、悪の砦の存在を強く感じています。宣教師の中には、霊的な領域について話す人もいます。たとえばある幻を見たという人からは「日本各地の都市の上には竜がいる。それぞれに色がついていて、東京の上にいるのは、権威を示す強い色である黒の竜。」と言われました。象徴的なのは、歌舞伎町に、弁財天(仏教から神道に取り込まれた、女性の守り神)を祭ったお堂があり、その壁に黒い竜と虎が描かれていることです。(弁財天はもともとヒンドゥー教でサラスヴァティ―と呼ばれる、知恵と音楽と水と富の女神。これは「水商売」の「水」にも通じます。)
エンバさんは日本人の友人から、この地域の現状は、にせものの「神」を拝んできた結果ではないかと言われました。にせものの神とは、金銭、薬物、夜職、売買春、アルコール、性的倒錯、暴力、など。これは日本に限ったことではありませんが、歌舞伎町はそういったものを美化している街なのです。
エンバさんと友人たちは、歌舞伎町の映画館TOHOシネマズの上に置かれた黒いゴジラ(竜の要素を併せ持つ存在)にも注目しています。また弁財天の目の前には「ルシファー(悪魔)」という名前の性風俗店があります。聖書には、盗み、殺し、破壊する悪魔のことをキリストが盗人に喩えているくだりがあり、一方で、キリスト自身は人々が豊かな生命を受けるためにこの世に来られた、と書いてあります。その聖書の言葉を胸に、エンバさんは、女性たちが買春客を待って立ち並んでいる地域を歩きながら、祈ることにしています。旧約聖書でイスラエルの民がエリコの町の城壁の周囲を歩いたのと同じように。セックスや薬物や飲酒などが繁栄と充足感をもたらすという嘘に騙された人々が、それらが実は自らを縛り付ける鎖に他ならないことに気づくように、手助けを続けたいとエンバさんは言います。人々を鎖から解放するキリストの力を信じ、歌舞伎町の堅固な砦が崩壊するよう祈っているということです。
闇の中の光
エンバさんはこの1年半、同じようなヴィジョンを持つ人々と出会ってきました。一人はKIYOさん。歌舞伎町のカラオケルームで月1回、賛美と祈りの会を企画している人です。(NFSJでも以前KIYOさんをお招きしてNFSJカフェを開催し、大阪での性風俗産業から信仰によって解放されたという驚くべき物語を聞きました。)それからDaichiさん。トー横キッズへのアウトリーチで歌ったり話したり祈ったりすることで、癒しをもたらしています。そのほかクリスチャンが週に2晩運営するカフェもいくつかあり、十代の子どもたちが無料で食事や宿泊ができます。さらには歌舞伎町地区にあるいくつかの教会も、そこで働く人々のために祈っています(ある教会の牧師は元暴力団員だそうです!)。これらの人々や団体はみな、闇に覆われた地域にもたらされた、光の存在です。エンバさんは今このとき、この場所でキリストの光を広げるように神さまから遣わされたと感じていて、その一部になれていることを嬉しく思っているそうです。(神門バニー)