スタッフのリレーエッセー (4) 傍観者であっては (星出卓也)

もう10年以上前のことになります。私の住んでいる田無駅近くに、決まって夜10時を過ぎると、外国人の若い女性が通りに立ち、男性に声を掛けていました。私も何度か片言で「お兄さん、マッサージあるよ」と声を掛けられました。その後ろでは決まって女性を監視する人が見張っています。どうして外国の女性が日本で深夜に通りに立って売春をしなければならないのだろうと思っていました。

その頃、映画『ネファリアス』を観ました。騙され、暴力によって売春を強要されて奴隷のように扱われている女性たちが世界中に存在するひどい現実を知り、そしてこの日本も決して例外ではないことを知らされ大変ショックでした。都市の中に当然のごとく存在する性産業の中に、恐ろしい実態が隠されていること。あの私が住む町の駅前に立っていた女性も、そのような一人だったのではないかと思うと、本当に身近な場所であのような現実があったのかと思うと、他人事のように、傍観者のように「どうしてあの女性はあのような仕事をしなければならないのだろう」と呑気に考えていた自分が恥ずかしくなりました。このような事態に対して傍観者であってはならず、何かをしなければと祈るようになりました。

救出活動を行うことは本当に大変なこと、仕事の合間にできるような簡単な問題ではなく、今も無力な自分を悲しく思う日々です。それでも許されない現実が私たちの身近にあることを人々に伝えたいと思います。アダルト業界や性産業が氾濫し、多くの男性たちが少女たちの性を買っている裏で、恐ろしい人権蹂躙と性奴隷の現実があることを伝えなければと願っています。

吸血鬼ドラキュラだって太陽の光が当たれば死にます。その本当の実態が人々の前で可視化され、人が物であるかのように売買されるひどい現実が白日の下に明らかにされれば、そのような産業は産業として成り立たなくなると信じて、非力ながらこの運動に加わらせていただいています。