関連ニュース報道

2017年版「世界現代奴隷推計」が発表されました

2017年9月19日に国際労働機関(ILO)、ウォークフリーファンデーション、国際移住機関(IOM)が共同で、「2017 Global Estimates of Modern Slavery」(「世界現代奴隷推計」)を発表した。以下は、報告書冒頭の「概要」を抄訳したもの。

*関心ある方に読んでいただくために、短時間でざっと粗くまとめた、あくまで仮のものです。内容に誤りがありましたら、japan@notforsalecampaign.org まで、ご連絡ください。原文はこちら

===========

「2017年版・世界現代奴隷推計」《概要》の抄訳

・本報告書は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標8.7に資するために作成された。

・ILO、ウォークフリーファンデーション、IOMが協力して作成し、さらにOHCHR(国連人権高等弁務官事務所)からの資料提供も受けている。

・本報告書において「現代奴隷制」(modern slavery)とは、強制労働(forced labour)、借金による束縛(debt bondage)、強制結婚(forced marriage)、その他の奴隷的習慣(other slavery and slavery like practices)、人身取引(human trafficking)の総称として使用する。要は、他人を脅迫、暴力、強制、騙し、権力濫用などにより逃げられない状況に置いて、搾取する状況のことである。

【世界全体の推計】

・2016年、現代奴隷は世界に約4,030万人いたと推定される。

・うち2,490万人が強制労働の被害者で、1,540万人が強制結婚の被害者である。

・女性(と少女)が全体の71%を占める。性産業での強制労働に限ると、被害者のうち99%が女性。その他の産業では58%。国家当局による強制労働では40%。強制結婚では84%が女性。

・現代奴隷のうち4分の1が子ども(18歳未満)。強制結婚の被害者のうち37%が子ども。強制労働では18%、国家当局による強制労働では7%。性産業での被害者のうち21%が子どもである。

・過去5年間(2012~2016)で、一度でも奴隷だった人は8,900万人。これは数日間の奴隷状態から5年間ずっとの人まで含んでいる。

【地域別の推計】

・現代奴隷の比率(人口比)はアフリカが最も多く、1,000人あたり7.6人。次いでアジア太平洋、ヨーロッパと中央アジア。(ただし、アラブ諸国と南北アメリカなどデータが不完全な地域もあるので要注意。)

・強制労働はアジア太平洋に多い(1,000人あたり4人)。

・強制結婚はアフリカに多い(1,000人あたり4.8人)

【強制労働】

・強制労働の被害者2,490万人のうち、1,600万人は民間企業・民間人による強制労働。480万人は強制的性搾取。410万人は政府・国の機関による強制労働。

〔強制的労働搾取(民間による)〕

・女性被害者の方が多い。(57.6%)

・全体の約51%が借金による束縛を受けている。農業、家事労働、製造業に就く大人に限ると、この割合は70%を超える。

・民間での強制労働の内訳は、家事労働が最も多く24%、次いで建設業が18%、製造業が15%、農業漁業が11%。

・雇用主や勧誘者(リクルーター)から複数の強制力を受けているため、奴隷状態から抜けられない。その強制力は、賃金未払いもしくは賃金無払いの脅しが24%、暴力の脅しが17%、実際の暴力が16%、家族への危害の脅しが12%、性暴力が7%。

〔強制的性搾取(大人)と商業的性搾取(子ども)〕

・380万人の大人が強制的な性搾取の被害を受けており、100万人の子どもが商業的性搾取の被害を受けている。

・全体の99%が女性。70%以上がアジア太平洋。

〔国家当局による強制労働〕

・410万人が被害に遭っている、国家当局による強制労働とは、経済発展のための農業・建設業、徴兵による軍事以外の仕事、地方自治体での非正規の仕事、受刑者の意志に反する労働である。

【強制結婚】

・1,540万人が強制結婚の被害に遭っているが、そのうち650万人が過去5年間で新たに結婚させられた人で、残りはそれより前に結婚させられた人である。

・88%が女性で、うち37%が18歳未満。児童婚(18歳未満)のうち、15歳未満で結婚させられたのが44%。

・(問題が深刻であるはずのアラブ諸国のデータが無いので推計には限度があるものの)人口1,000人あたりで最大なのはアフリカの4.8人。

【データ出典と推計方法】

・現代奴隷については確実なものが存在しないため、あらゆるデータを組み合わせて推計した。

・中心になっているのが、48カ国71,000人を対象に行われたインタビューを下敷きとした、特別設計された54の国別確率的調査である。これら54のデータベースに、IOMが提供した人身取引被害者支援で得られたデータを組み合わせて、強制的性搾取、子どもの強制労働、強制労働の期間、などを割り出した。国家による強制労働については、ILO強制労働条約の監視機構が正規に認めた資料、ILO勧告の系統的調査をもとに割り出した。

・これらの方法を組み合わせ、2012年から2016年までの5年間のデータが得られた。5年間の合計ではのべ8,900万人が被害に遭っており、それらもすべて分析・処理した上で、本報告書の推計とした。

【結論と展望】

・現代奴隷制を生み出す原因は経済、社会、文化、法律、などの分野で多岐に亘るため、多面的な対応が必要だ。万能薬は存在しない。それでも、この世界推計報告から、そしてこれまでの経験から得られる、政策上の優先事項を指摘することはできる。

・人々を奴隷状態に追いやるような脆弱性をなくすためには、社会的な保護が必要。

・労働者の権利を守り、搾取に陥らないようにすること。

・移住も大きな要素なので、移住者に関する政策の改善。

・ジェンダーの要素も考慮する必要がある。

・借金による束縛を引き起こす原因にも、対処する必要がある。

・いまだ発見されていない被害者が多いので、被害者認知の向上は必須。

・政情不安、紛争や災害なども大きな原因なので、人道的なアクションが必要。

・現代奴隷についての証拠データをさらに蓄積することも重要。中でも優先課題なのが、児童の性搾取と児童婚に関する統計。

・細分化した統計データも必要。特に、成人の強制的性搾取被害、紛争地域における被害、時間的経過の観察など。

・しかし、最も重要な優先事項は、各国政府による現代奴隷についての調査とデータ収集を行い、政策を作ること。

・国際的な協力も大切であり、SDGsの目標8.7達成のために結成された、「アライアンス8.7」というマルチステークホルダーのパートナーシップが果たす役割は大きい。

・民間事業者での強制労働が多いことから、ビジネス界との連携は不可欠だ。

・また各国政府間で、労働法や刑法の着実な執行、移住者政策での協力が求められる。

以上