NFSJブックレットを活用しよう!

Vol. 3 ブックレットをヒントに世界の“いま”を

 実際に起きているニュースを探してみよう

「新聞やウェブには、毎日のように人身取引や現代奴隷の話題が載っている」と言ったら、驚きますか? ブックレットの8〜11ページでは、日本でのケースやその背景を紹介していますが、実際にはどんなニュースがあるのか、自分でも検索してみましょう。

検索ワードとしては「人身取引」「人身売買」の両方を使います。「人身売買」は報道でよく使われている言葉だからです。たとえば、「人身売買」「日本」でニュース検索すると、最新の報道に絞ることができます。ヒットした記事の発信元が信頼できる新聞社や通信社か、または専門的な立場からの解説かどうかを確認しましょう。地方紙が追跡報道をしていることもありますし、弁護士ドットコムニュースなどには法的な視点からの記事もあります。

2025年7月初旬の検索例

この記事を書いているのは2025年7月4日。Yahooでニュース検索すると、「海外特殊詐欺グループが日本人を人身売買か」(FNN)、「風俗スカウトグループ摘発」(週刊プレイボーイニュース)などが出てきました。後者のような読み物記事は、主観が入りがちなので元のニュースをたどるのも大切です。「人身売買」に加えて記事の中のキーワード「アクセス(スカウトグループの名前)」で再検索すると、2025年2月25日の時事ドットコムの記事などが見つかりました。他にも、「現代の奴隷、『京都の舞妓に人権なんかない』元舞妓が再び告発」(弁護士ドットコムニュース)もありました。

「セクストーション」「グルーミング」などの比較的新しい言葉は、日本ではあまりヒットしませんが、事例がないのではなく、いまだに「人身取引」とは認識されていないからでしょう。「性的」「グルーミング」で検索して見つかるのは、国内では啓発記事が多いです。海外では人身取引の一環とされているようで、いくつかの実際の事件がヒットしました。

自分で調べて世界のいまを掴もう

数日続けて検索してみると、人身取引やそれに近い事件が実に多いことに気づきます。ニュースに「人身取引」といった表現がなくても、「この事件は人身取引では」とか「背景には、現代の奴隷制があるのでは」と読み取る力もついてきます。

ブックレットには、こうした視点のヒントとなるキーワードがたくさんあります。自ら調べて得た知識の積み重ねが、被害者にも加害者にもならないことにつながると思うのですが、いかがでしょうか? ぜひ、気になる言葉を使って、世界の“いま”を掴んでみてください。

(栗山のぞみ:NFSJ副代表/ブックレット編集協力)

*ブックレットは無償配布していますのでお気軽に japan@notforsalecampaign.orgまでお問合せください(まとまった部数の場合はご寄付をお願いします)。またNFSJのウェブサイトではデジタル版を公開しています。ぜひご活用ください。⇒ https://notforsalejapan.org/booklet  

Vol. 2 ブックレット作成過程や思い

「無関心」とは?

それは、ずばり誰も幸せじゃないっていう心のことです。むしろ陰湿な薄暗がりの闇に蔓延る邪悪な心を積極的に許すくらいの「力」が存在していて、決して「無」なんかじゃない、例えば、いじめがあっても見ないふりしているような……、「無関心」とは、そういうNGな力学が生じている困った状態だとわたしは思っています。だからわたしは仕事でもどんなときでも、「自分にも他人にも関心が有ります!」という心を表現しています。それが、わたし自身を幸せにしていると確信しているからです。

特別な印刷機で華やいだ色彩に初挑戦

さて、このN F S J発行のブックレット『「人身取引」「現代奴隷」ってなんだろう?』の印刷の色がとても美しく仕上がっていて不思議に思われた方もたくさんいらっしゃると思います。

これは、印刷といったら常識のC M Y K(青赤黄黒_いわゆる絵の具の色のかけ合わせデータ)の印刷ではなく、R G B(赤緑青の光の三原色のデータ)から印刷する特別な印刷機を使用することで、今までの常識とはずいぶんと違った明るくて色彩豊かな仕上がりになっています。惠友印刷さんにこの特別な印刷機があることを教えてもらって、初めての挑戦を試みました。

「人身取引」「現代奴隷」、こんなテーマに当然無関心でいたい人でも、この華やいだ色のブックレットなら無視できないのではと期待を込めました。「現代奴隷」、「セクストーション」などの仕掛けられた罠の入り口は、日常のウェブサイトのまさにR G Bの華やいだ色彩との地続きにあるということとも整合性を持ちつつ独特な表現ができたかなと思います。 

「人身取引」と聞いて自分には関係ないと言いきれる

物流サプライチェーンの矢印で網羅された世界地図、人身取引の流通ルートはやすやすと重なるし、どんな労働条件下で取引された物資であるのかも混然としています。

わたしは「現代奴隷」という概念が特別で限定された場所にだけ存在するものとは思っていません。日々の自分の暮らしぶりとか、自分の仕事から得る報酬のそのマネーフローにも惨めさが混ざってはいないだろうか?人間関係、労使関係は健全か?そういうことに無関心でいたならどこに幸せがあるのでしょうか。

わたしたちが被害者にも加害者にもならないために、たった16ページのささやかなブックレットですが、N F S Jだからこそできた1冊だと自負しています。

(ナムーラミチヨ:NFSJスタッフ/ブックレット編集デザイン・イラスト)

*ブックレットは無償配布していますのでお気軽に japan@notforsalecampaign.orgまでお問合せください(まとまった部数の場合はご寄付をお願いします)。またNFSJのウェブサイトではデジタル版を公開しています。ぜひご活用ください。⇒ https://notforsalejapan.org/booklet


Vol.1 今日(7/2)はNFSJの誕生日! 啓発ブックレットをご紹介します♬

創立記念日、世界デー、そして新しいブックレット

今日7月2日はNFSJの誕生日です! 14年前の今日、アメリカの団体Not For Saleの日本支部を立ち上げよう!と有志が集まり、第1回スタッフミーティングが新宿で行われました。以来14年、本当にたくさんの方たちに支えられて様々な活動を行ってくることができ、スタッフ一同心から感謝しています。

さて、今年も暑い暑い夏が、そして月末に「人身取引反対世界デー」を控えた7月が、巡ってきました。毎年この世界デーに合わせて、NFSJではネット上で啓発キャンペーンを展開しています。今年は2月に完成した啓発ブックレット『「人身取引」「現代奴隷」ってなんだろう?』(A5判16ページ)を題材に、5回にわたり私たちの思いを皆さんにお伝えしていこうと思います。

人身取引と現代奴隷、よく意味がわからない…?

人身取引や現代奴隷という言葉は聞いたことがあっても、いまいちピンと来ない人も多いのではないでしょうか。実は日本や世界で起きている様々な出来事が、本当は人身取引や現代奴隷と呼ぶべき事柄なのに、それらの言葉を使って報じられることが少ないからなのです。人身取引とは、人を騙したり脅したりして、無理やり重労働をさせたり性的な仕事や行為を強要し、不当な利益を得ることです。大雑把に言えば、現代奴隷とは、そうした被害に遭っている人のことです。

そういうヒドい話って、実はよく耳にしませんか? いわゆる「児童ポルノ」や「ホストクラブの売掛金」、「失踪する技能実習生」「闇バイト」なども、人身取引に当たる場合があるとNFSJでは考えています。人を騙したり脅したりして何かを強要し利益を得る、という共通の「構造」があるからです。

一見関係無さそうでも、人の弱みにつけ込んで奴隷にする同じ構造の犯罪が、世界中で起きています。そうした問題を無くすため、私たち自身が被害者にも加害者にもならないためにはどうしたらいいのか、NFSJのこの新しいブックレットで伝えていきたいと思っています。ぜひ活用してくださいね!

(山岡万里子:NFSJ代表/ブックレット執筆)