(第24回NFSJカフェ 2021年6月23日オンラインにて実施)
ゲスト講師:岡恵さん(NPO法人ぱっぷす相談員)
NPO法人ぱっぷすはNFSJも参加しているJNATIP(人身売買禁止ネットワーク)のメンバーで、岡さんは運営委員の一員だ。JNATIPでは毎年政府関係省庁との意見交換会を行っており、事前に政府に対し様々な質問や要請を提出する。ある年、岡さんの準備を私(栗山)がお手伝いさせていただく機会があった。その時に岡さんがつぶやいた「とにかく性的同意が問題の根本なんだよね」という言葉をきっかけに、このNFSJカフェが実現した。
当日は冒頭から「体の自己決定」「バウンダリー」「性的同意」等のキーワードが並んだ。子どもも大人も自分の体をどう扱うかは自分で決める「体の自己決定」権を持っている。自分自身が心地よいと思う人との距離、境界線(バウンダリー)も自分で決めていい、と説明された。
またむやみに人には見せない、触らせないプラベートゾーンがあり、触れられそうになったら「嫌!」と意思表示をしていいことも。ぱっぷすに相談を寄せる被害者の多くがこれらを知らないという。
ディスカッションでは「私たちも教えられてはいないし、知らない」「性教育以前の問題。自分の体を大切にすることを幼少時から伝えていくことが重要」等の意見が出た。
性的同意に関して、私が理解した重要なポイントは…
・性的同意は対等な関係で結ばれるもの。親子、先生と生徒など不均衡な力関係のもとでは成り立ちにくい。アダルトビデオ出演などの契約関係、金銭の授受が存在する場面では、関係が対等ではないので性的同意はない。
・性的同意は毎回確認されるべきもの。過去に同意したとしても、今イヤならNoと言ってよく、その意思は尊重されるべき。写真やビデオ等は撮影時だけでなく、視聴時も撮影者と被写体の間で毎回同意確認が必要となる。しかしそれは現実ではほぼありえないので、画像・映像等では性的同意は成り立たない。
なるほど! と腑に落ちた。
つまり商業的なものはもちろん私的な撮影でも、性的画像、映像ではそもそも性的同意がなく、成り立たない。性的に搾取しない・されない社会をつくるには、性的同意のこの概念が広く知られることと、いつでもNoと言えばそれが尊重される”常識”が必要だ。
もう一つ心に残ったのは、「日頃から社会がどのようなメッセージを若い世代に送っているかが重要」というもの。自己責任を強調する社会の風潮は、被害者に「自分が悪い」と思わせ、悩みを相談しにくくさせる。
あなたは絶対に悪くない。後になって「本当に嫌だった!」と気づいたのだから、気づいた今から相談していい。対価を受け取っていたとしても関係ない。まずは相談しよう! これは、私たちNFSJもしっかりと発信していきたいメッセージだ。
(栗山のぞみ)
*NPO法人「ぱっぷす」のウェブサイト
https://www.paps.jp/
*AV出演被害防止・救済法施行(2022年6月23日)について
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/avjk/index.html
*JNATIPのオンラインセミナーの動画
2020年夏の第1回セミナーに岡恵さんが、また2021年冬の第1回セミナーにぱっぷす理事長の金尻カズナさんがそれぞれ登壇され、デジタル性暴力等について語っている。https://www.jnatip.net/videos
*岡さんの詳しいプロフィールなどは、このイベント(第24回NFSJカフェ)の告知ページへ
http://notforsalejapan.org/news/202105/853