Vol.8 「『海の奴隷制』と日本のつながり~私が食べているこの魚は大丈夫?~」

(第28回NFSJカフェ 2022年5月27日オンラインにて実施)
ゲスト講師:小園杏珠さん(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)

認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウのビジネスと人権プロジェクト担当の小園杏珠(こぞのあんじゅ)さんを講師に迎え、オンラインでNFSJカフェを開催。海外の漁場で起きている奴隷労働、そして日本の関与についてお話しいただいた。

2018年製作の映画「ゴースト・フリート〜知られざるシーフード産業の闇〜」は、インドネシアの漁船で奴隷として働かされている男性たちの現状と、そこから助け出そうとしているタイ人女性の活動家についてのノンフィクションである。この映画の公開に先立ち、今回のNFSJカフェでこの問題を取り上げることにした。多くの被害者たちは田舎から誘われ、逃げ道のない虐待的な環境に閉じ込められている。違法に、もしくは奴隷を使って漁獲された魚が日本でも知られることなく購買され消費されていることを、小園さんが説明してくれた。

伝統的に日に一回は魚を食べる日本人は、国内外で魚を多く消費している。しかし製品の裏にある闇の産業は全く知られていない。日本は海産物の輸入が世界で三番目に多く、輸入されている魚の24~36%が違法に水揚げされた魚だと言われている。違法に獲られた魚や奴隷が使われている場合はIUU (Illegal (違法), Unregulated (無規制), Unreported (無報告))漁業 とも呼ばれる。参加者も皆この数値やスーパーでIUU漁業による魚が加工され他の製品となって売られている現実に驚いた。

いくつかの国や組織は法律や規則を作り、自分たちの領域や所属する国々で確実に実行するよう努めている。欧州連合(EU)と国連の食糧農業機関(FAO)だ。日本は FAO によってつくられた寄港国措置協定(PSMA)の一員で、海洋管理協議会(MSC)と水産養殖管理協議会(ASC)の認証などを使っている。このような協定により、無報酬で強制労働を強いられている人々の人権を守り、責任を持って自分たちの購入している魚がどこから来ているのかを知ることができる。

小園さんは最後に、私たちがどのようにこの問題に立ち向かえるのか、お話ししてくれた。まず日本における違法漁業の実態を知り、漁業での奴隷労働について人に知らせること、そして、違法漁業やそこで行われている奴隷労働を止める活動を行っている団体を支援することだ。
(ウィルソン恵み)

・ゲストのプロフィールなど詳しくはこちら

・ヒューマンライツ・ナウによる日本の水産業関連会社に対するアンケート調査結果報告書 https://hrn.or.jp/news/21115/

・ヒューマンライツ・ナウによるIUU漁業問題に関するページ https://hrn.or.jp/news/21586/

・映画『ゴースト・フリート~知られざるシーフード産業の闇』 https://unitedpeople.jp/ghost/

・映像『タイ:海の奴隷制~無法の海域 (Thailand: Sea Slavery~The Outlaw Ocean)』(日本語字幕つき14分)【NFSJ YouTubeチャンネル】 https://www.youtube.com/watch?v=D1nk16IXXCc